「自分のことは、自分で最後まで決めたい」身寄りのない男性を支援して感じたこと

自分のことは自分で決めたいと考える高齢男性をイメージした画像 終活・老後の備え

行政書士として仕事を始めて、私が最初にご依頼をいただいた方のお話です。

その方は高齢の男性で、ケアマネジャーからの紹介でお会いしました。

初めてお会いした時にはすでに重い病気を患い、医師から余命についても説明を受けていました。

そして、身近に頼れるご家族はいませんでした。

ご本人が心配されていたのは、

「自分が死んだ後のことは、どうしたらいいんやろう」

ということでした。

「自分のことは自分で最後までしたい」

遺言や死後事務委任契約など、利用できる制度について一つずつ説明しました。

その中で、ご本人がおっしゃった言葉が今でも印象に残っています。

「自分のことは、自分で最後までしたい」

そこで、ご本人の希望を実現するため、公正証書による遺言と死後事務委任契約を準備することになりました。

しかし、その頃には病状が進み、外出することも次第に難しくなっていました。

公証役場まで行くことができない。だからといって、そこで諦める必要はありません。

公証人にご自宅まで出張していただき、ご本人の意思を確認してもらいながら手続きを進めました。

契約書を作れば終わり、ではありませんでした

この支援で強く感じたのは、終活は書類を作っただけでは完結しないということです。

ご本人は少しずつ身体を動かすことが難しくなっていきました。

看護師さんとは、最期を迎えた際のエンゼルケアなどについて事前に相談しました。

日々のケアについては介護職の方々と。体調の変化や緊急時の対応については医師や看護師と。

それぞれの専門職が役割を持ち、ご本人が望む最期を迎えられるよう、一つのチームとして支援しました。

行政書士だけですべてができるわけではありません。

医療、介護、そして法的な支援。それぞれがつながることで初めて、その人の生活を最後まで支えられるのだと、この仕事を通して教えていただきました。

亡くなった後、ご本人との約束を実行する

その後、ご本人は亡くなられました。

そこからは、生前に結んだ死後事務委任契約に基づいて、ご本人と決めていたことを一つずつ実行していきました。

亡くなった後に必要となる手続きや身の回りの整理などを、ご本人の希望に沿って進めました。

そして、もう一つ大切な仕事がありました。

遺言の実現です。

ご本人は、最後まで自分を支えてくれた介護の仕事に携わる方々への感謝から、「残った財産を介護のために役立ててほしい」という希望を持っておられました。

その意思に従い、財産は介護職に関係する団体へ寄付されました。

その団体にとって、遺贈を受けることは初めてだったそうです。

後日、丁寧な感謝状をいただきました。そこには、いただいた思いを受け継ぎ、これからも介護業界のために努力していきたい、という趣旨の言葉が記されていました。

ご本人は亡くなられました。

それでも、その方の意思は、その後も誰かの役に立っている。

遺言というものの意味を、改めて感じた出来事でした。

終活は「亡くなった後」のためだけではない

この方との出会いは、私にとって行政書士として最初の仕事でした。

そして、この経験は今の私の仕事の考え方にもつながっています。

身寄りがない。将来、身体が動かなくなるかもしれない。認知症になるかもしれない。自分が亡くなった後、誰が片付けてくれるのかわからない。

そういった不安を抱えている方は少なくありません。

でも、元気なうち、そして自分の意思を伝えられるうちだからこそ、決められることがあります。

誰に何をお願いするのか。財産をどうするのか。どんな最期を迎えたいのか。そして亡くなった後、自分の思いをどう残すのか。

遺言や死後事務委任契約は、そのための手段の一つです。

人生の終わりを考えることは、これからの人生を安心して生きること。

私がこの仕事を続けている原点には、最初にご依頼いただいたこの方との出会いがあります。

有村行政書士事務所では、遺言や死後事務委任などの書類を作ることだけを目的とは考えていません。

その方が最後までどのように生きたいのか。そこから一緒に考える終活支援を大切にしています。

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