米国中間選挙で考える日本の未来

時事

20年前、オーストラリアで見たアジア経済の変化

アメリカ中間選挙をきっかけに

2026年11月3日、アメリカで中間選挙が行われた。トランプ政権の残り2年間を左右する重要な選挙であり、議会の勢力が変われば、今後の経済政策や外交政策にも影響が及ぶ可能性がある。

今回の選挙では、物価高や生活費の負担が大きな争点となった。これは、日本に暮らす私たちにとっても決して他人事ではない。

日本でも物価高が続き、賃金の上昇が生活の豊かさにつながっているとは、なかなか実感しにくい状況にある。そして、もう一つ気になるのが、日本の国際競争力だ。

世界経済が大きく変化するなか、日本はこれから再び力強い成長を取り戻すことができるのだろうか。そんなことを考えていると、20年以上前にオーストラリアで暮らしていた頃の光景を思い出した。

日本がアジアの先頭を走っていると思っていた

2000年代初頭、私は仕事の関係でオーストラリアに約1年半滞在していた。当時、日本は世界第2位の経済大国であり、電機、自動車、精密機械など、多くの分野で高い国際競争力を誇っていた。

私自身も、日本はアジアの中で経済的にも技術的にも一歩先を進んでいるという認識を持っていた。ところが、現地で目にした光景は少し違っていた。

韓国人が使っていた携帯電話は、私が日本から持ってきたものよりも先進的に見えた。電気店にはサムスンの製品が並び、街中ではヒュンダイの自動車を見かけた。当時の日本国内では、韓国メーカーの製品を目にする機会はまだ少なかった。

「韓国企業は、海外でここまで存在感を高めているのか」そう感じたことを、今でも覚えている。

日本の製品や技術が優れていることと、世界市場で競争力を持ち続けることは、必ずしも同じではない。海外で生活したことで、それまで当たり前だと思っていた日本の優位性を、少し違う角度から見るようになった。

2012年、再び訪れたオーストラリア

2012年、私は再びオーストラリアを訪れた。以前、日本人が多く集まっていた一角は、すっかり様変わりしていた。

かつての日本人街は以前ほどの活気が感じられず、中国系の資本が進出したと思われる建物が目立つようになっていた。街で見かけるアジア人も、中国人や韓国人の存在感が強くなったように感じた。

もちろん、一つの街の変化だけで、国全体の経済力を判断することはできない。しかし、私にはアジアの経済的な勢力図が変わりつつあることを象徴する光景に映った。

その頃、日本のシャープは経営不振に苦しみ、一方で韓国のサムスンは世界市場で躍進を続けていた。かつて世界を席巻した日本の電機メーカーが苦戦する一方、韓国や中国の企業が国際市場で存在感を高めていく。

2000年代初頭に感じた小さな違和感が、より現実味を帯びて感じられた。

日本の失われた30年

日本はバブル崩壊後、長期にわたる経済停滞を経験してきた。デフレが続き、企業は価格を上げにくくなり、賃金も伸び悩んだ。

所得が増えなければ、消費は伸びにくい。消費が伸びなければ、企業も新たな投資に慎重になる。こうした循環が、日本経済の成長を妨げてきた一因ではないだろうか。

もちろん、日本企業が投資をしてこなかったわけではない。自動車、産業機械、半導体製造装置、素材など、現在も日本企業が高い競争力を持つ分野は数多くある。

また、経済停滞の原因をデフレや投資不足だけで説明することもできない。人口構造の変化、生産性、産業政策、国際競争の激化など、さまざまな要因が重なっている。

それでも、今になって考える。日本は、もっと早い段階から将来の成長に向けた投資を積み重ねる必要があったのではないだろうか。

技術開発、人材育成、新たな産業の創出、そして海外市場への展開。目先の安定を守ることと、将来の競争力を育てること。その両立が、十分にできていたのだろうか。

物価が上がることと、豊かになることは違う

現在、日本は長く続いたデフレ的な経済環境から変化しつつある。しかし、物価が上がれば、それだけで経済が成長するわけではない。

賃金の上昇が物価の上昇に追いつかなければ、国民の購買力は低下する。物価上昇率が落ち着いたとしても、一度上がった商品やサービスの価格が、以前の水準に戻るとは限らない。

重要なのは、持続的な賃金上昇を実現できる経済をつくることだと思う。そのためには、企業の生産性を高め、新たな付加価値を生み出す投資が欠かせない。

一方で、将来の成長だけを重視し、現在の生活の苦しさを放置するわけにもいかない。家計を支え、消費の落ち込みを防ぐこと。そして、将来の成長につながる投資を進めること。今の日本には、その両方が必要なのではないだろうか。

世界の変化に、日本はどう向き合うのか

今回のアメリカ中間選挙の結果によって、トランプ政権の政策運営には変化が生じるかもしれない。しかし、米中間の経済・技術競争や、各国が自国の産業と安全保障を重視する流れは、一度の選挙でなくなるものではないだろう。

世界では今、AI、半導体、エネルギーなどの分野で、国家や企業による大規模な投資が進められている。技術革新の速度は速く、国際競争の環境も絶えず変化している。

日本には、今も優れた技術や企業、人材がある。しかし、過去の実績が将来の競争力を保証してくれるわけではない。

20年以上前、オーストラリアで目にした韓国企業の存在感。2012年に再訪した際に感じた、アジア経済の変化。あの頃から世界は大きく変わった。

そして今、日本は再び重要な岐路に立っているように思う。これからの10年が、日本経済の再成長につながる時間になるのか。それとも、停滞がさらに長期化するのか。

その答えは、これからの政策や企業の投資、そして社会全体の選択によって変わっていくのだろう。失われた30年を取り戻すことは簡単ではない。それでも、過去を振り返るだけでは未来は変わらない。

10年後、また「あのとき、もっと挑戦しておけばよかった」と振り返ることのないように。今こそ、将来に向けて何を育て、何を残していくのかを考える時期なのではないだろうか。