生活保護なら葬儀代も安心?親が亡くなった後、家族に突然の負担が生じることも

終活・老後の備え

はじめに

「生活保護を受けているから、自分が亡くなった後のことも大丈夫」

そう思っている方は、意外と多いのではないでしょうか。

実際に私が関わったケースでも、生活保護を受給していた父親から、疎遠気味だった娘さんが「自分は生活保護を受けているから、死んだ後のことも大丈夫」と聞かされていました。

ところが、お父さんが亡くなった後、娘さんが直面した現実は、そのイメージとはかなり違うものでした。

本人が亡くなると、生活保護はそこで終了します

生活保護は、受給している本人の生活を保障するための制度です。本人が亡くなれば、その方に対する生活保護は終了します。

もちろん、生活保護制度には「葬祭扶助」という仕組みがあります。ただし、生活保護を受けていた方が亡くなれば、家族の状況にかかわらず葬儀費用が当然に支給される、という制度ではありません。

葬祭を行う人の生活状況や、亡くなった方に葬祭を行う扶養義務者がいるかどうかなど、個別の事情によって取扱いが異なります。実際の適用については、福祉事務所への確認が必要です。

私の実務でも、亡くなった方の配偶者や子自身が生活保護を受給しているケースでは葬祭扶助につながったことがありますが、家族がいるから、あるいは本人が生活保護だったからといって、当然に同じ結論になるわけではありません。

娘さんに突然降りかかった「死後のこと」

このケースでは、お父さんと娘さんは普段から密接に行き来する関係ではありませんでした。娘さん自身も、「父がそう言っているのだから、亡くなった後は行政がある程度対応してくれるのだろう」と受け止めていました。

しかし、実際に亡くなると、葬儀、納骨、住んでいた部屋の片付けや遺品整理、各種契約や手続き、さらに債務や相続についての確認など、さまざまな問題が一気に目の前に現れました。

葬祭扶助は、死後に発生するあらゆる費用や手続きを丸ごと引き受ける制度ではありません。

本人にとっては「自分が亡くなった後」の話でも、実際にそれをするのは、残された人です。

「生活保護だから大丈夫」という思い込み

この経験から、私は「生活保護を受けていれば、亡くなった後のことも行政が何とかしてくれる」と考えている方は、体感的に少なくないように感じています。

本人だけでなく、ご家族もそう思っている場合があります。

けれど、葬儀や納骨だけでなく、賃貸住宅の明渡し、家財や遺品の整理、契約の解約、相続や債務の確認など、亡くなった後には多くの実務が残ります。

「誰かがしてくれるだろう」と思っているだけでは、実際に亡くなったとき、その負担が突然家族に集中してしまうことがあります。

子どもがいるなら、元気なうちに一度話しておく

では、どうすればよいのでしょうか。

やはり、子どもなど将来相続人になる可能性のある家族がいるのであれば、元気で意思を伝えられるうちに、人生の終わりについて一度話しておくことが大切だと思います。

どんな葬儀を希望するのか。納骨先は決まっているのか。住まいはどうするのか。家財はどうするのか。契約や借入れはあるのか。そして、家族にどこまで頼みたいのか。

すべてを一度に決める必要はありません。まず「自分はこう考えている」「あなたはどう考えている」と話すだけでも、亡くなった後の混乱は大きく変わります。

まとめ

生活保護は、生活に困ったときの大切なセーフティネットです。しかし、「生活保護を受けているから、死後のこともすべて公費で何とかなる」と考えるのは危険です。

葬祭扶助には要件があり、死後に必要となるすべての費用や手続きを対象にする制度でもありません。

本人が安心していても、家族がその前提を知らなければ、亡くなった瞬間に困るのは残された人です。

だからこそ、生きているうちに家族で話し、誰が何をするのか、どこまで準備しておくのかを整理しておく。それも大切な終活の一つだと思います。

【事例について】

この記事は実際の相談・支援経験をもとにしていますが、個人が特定されないよう、年代・家族関係・生活状況などの一部を変更・再構成しています。

※葬祭扶助の適用は個別の事情によって異なります。実際の利用可否については、お住まいの地域を管轄する福祉事務所等へご確認ください。