老後を家族に頼る?専門家に頼る?終活相談で見えてくる親子のすれ違い

終活・老後の備え

はじめに

老後のことを家族に頼るのか、それとも専門家に頼るのか。終活の相談では、「子どもたちに迷惑をかけたくない」「自分のことは自分で決めておきたい」と話される方が少なくありません。

もちろん、ご本人に十分な意思能力があり、ご本人が希望されているのであれば、必要な契約を検討していくことはできます。ただ、私がご家族のいる方から老後の生活支援や死後の手続きについて相談を受けたときは、ご本人の了解を得たうえで、できる限りご家族がどのように考えているのかも確認するようにしています。

なぜなら、家族の意向を確認してみると、相談の最初には見えていなかったことが分かる場合があるからです。

「家族は何もしてくれない」と思っていたけれど

本人から話を聞いていると、「子どもは自分の老後のことを何も考えてくれていない」と感じていることがあります。ところが、ご家族にも話を聞いてみると、「もちろん必要になれば最後まで支えるつもりです」と答えられることがあります。

本人には、その気持ちが伝わっていません。反対に家族は、「そんなことは言わなくても分かっているだろう」と思っています。

老後や介護、亡くなった後のことは、家族であっても意外と話しにくいものです。そのため、お互いに相手のことを考えているのに、肝心の気持ちが共有されていないことがあります。

専門家への相談が「家族へのメッセージ」になっていることも

もう一つ、実際の相談で感じることがあります。専門家への相談そのものが、ご本人から家族へのメッセージになっている場合です。

「あなたたちが私のことを何も考えてくれないのなら、私は私で専門家にお願いする。本当にそれでいいの?」という気持ちです。

本人が意識してそうしているとは限りません。ただ、話を進めていくうちに、ご家族との話し合いが始まり、「やっぱり今年はまだいいです」「もう少し家族と話してみます」と、契約の話がいったん止まることがあります。

相談を受けている側としては、家族のやり取りに巻き込まれたように感じることもあります。けれど、そこで初めて本人と家族がお互いの考えを言葉にできたのであれば、その相談には十分な意味があったと思っています。

終活相談は、契約することだけが目的ではありません

終活の相談というと、遺言書を作る、任意後見契約を結ぶ、死後の手続きを専門家に任せる、といった「契約」や「手続き」をイメージしがちです。

しかし、本当に大切なのは、これからの生活や介護、そして自分が亡くなった後のことを「誰が、どこまで担うのか」を整理することです。

家族が担えることもあれば、仕事や距離、家庭の事情などから難しいこともあります。家族だけでは難しい部分を、専門家や介護・福祉の支援で補うという方法もあります。

反対に、ご家族と十分に話し合った結果、「今のところ専門家との契約までは必要ない」という結論になることもあります。それも一つの終活の成果です。

「家族に迷惑をかけたくない」の中身を、一度話してみる

「家族に迷惑をかけたくない」という言葉は、終活の相談で本当によく聞きます。でも、本人が考える「迷惑」と、家族が考える「迷惑」が同じとは限りません。

本人は「子どもには頼れない」と思っていても、子どもは「必要なことはしたい」と思っているかもしれません。逆に、本人は家族がしてくれると思っていても、家族には現実的にできないことがあるかもしれません。

だからこそ、元気で自分の意思を伝えられるうちに、一度話しておくことが大切です。

まとめ

専門家に相談したからといって、必ず契約まで進めなければならないわけではありません。相談をきっかけに本人の不安が言葉になり、家族の気持ちが確認でき、お互いの考えを整理できることがあります。

老後を家族に頼るのか、専門家に頼るのか。二者択一で考える必要もありません。家族ができること、専門家に任せた方がよいこと、介護や福祉の支援を使うことを整理しながら、その人に合った形を考えていけばよいと思います。

終活は、契約をするためだけのものではありません。 家族とこれからのことを話すきっかけをつくることも、大切な終活の一つです。

【事例について】

この記事は実際の相談・支援経験をもとにしていますが、個人が特定されないよう、年代・家族関係・相談内容などの一部を変更・再構成しています。